話し相手が欲しくて
「――それじゃあ、また明日」
「ええ。では、おやすみなさい」
ノートパソコンのモニター上部につけたウェブカメラに手を振って、マヤはウインドウズをシャットダウンさせた。
壁の時計を見ると午前2時。ダイニング脇の作業テーブルに置いてあるノートパソコンを閉じて、あくびを一つ、マヤは寝室に向かった。ダブルサイズのベッドで亭主がぐっすりと眠っている。
足音を消してベッドに横になり、目を閉じて、マヤはしばらく考える。
普通に学生時代を過ごして普通に仕事をして、27歳で結婚して今年で30歳。生活に不満はないし、亭主は今でも優しく、子供はまだいないが、自分は、まあ幸せなほうだろうと。
このご時勢にファミリータイプのマンションを購入して、近隣との付き合いもそこそこだし、古くからの友人も多く、元仕事仲間との付き合いも未だにある。不満がないどころか、贅沢なほうだろうとも解る。
先ほどまでライブチャットで若い男と喋っていたのは、単なる暇潰しで、浮気だとかそういう大げさなものでもない。
相手の名前や姿、声、性格や職業は知っているが、所詮はパソコンを介してのお喋りで、ゲームみたいなものだ。
それでも、どこか後ろめたい気分になるのは、相手の男が若いからか、その男と1ヶ月近く喋っているからか、亭主が変わらず優しいからか……正直、解らなかった。
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2011年9月14日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:体験談

